多汗症

多汗症は2種類に分類されます。

1) 全身の発汗が増加する「全身性多汗症」

2) 体の一部のみ発汗が増加する「局所多汗症」

局所多汗症は手掌、足底、腋窩に生じることが多く、日常診療でもよくみられる疾患です。本邦では有病率は約5%といわれています。

掌蹠多汗症:幼少時期ないし思春期のころに発症し、手掌・足底に精神的緊張により多量の発汗を認める病的状態です。

腋窩多汗症:腋窩は精神性発汗と温熱性発汗の共存する特殊な環境であり、左右対称性に腋窩の多汗がみられ、下着やシャツなどにしみができるほどです。

多汗症には診断基準と重症度があります。                                       

多汗症の診断基準

局所的に過剰な発汗が6カ月以上持続しており、以下の2項目以上あてはまる場合を多汗症と診断しています。

1)最初に症状がでるのが25歳以下である。                        

2)対称性に発汗がみられる。                     

3)睡眠中は発汗が止まっている。                   

41週間に1回以上多汗のエピソードがある。                  

5)家族歴がみられる。                        

6)それらによって日常生活に支障をきたす。 

重症度

  • ① 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。
  • ② 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。
  • ③ 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。
  •  発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。                                                       ③と④が重症といわれています。

治療

日本皮膚科学会では①、②が第1選択、③が第2選択として推奨されています。

① 外用薬

塩化アルミニウム

汗の管に栓をして汗を減らす外用液です。塩化アルミニウムは角層の汗管に沈着し、汗の管を閉塞させます。比較的発汗の少ない就寝前に塗布しますが、塗布で効果が少ない場合は密封療法を行うとより効果的です。どのタイプの多汗症でも効果がありますので、まずはこれで治療してみます。皮膚炎が起こることがあるのでかぶれ防止策も必要です。当院で作成しています。

ラピフォートワイプ・エクロックゲル

原発性腋窩多汗症に保険適応がある外用薬です。汗はアセチルコリンという物質がエクリン汗腺を刺激することで分泌されます。これらの薬はアセチルコリンによる刺激を阻害するために汗の分泌を抑えることができます。

アポハイドローション

原発性手掌多汗症に保険適応のある外用薬です。ラピフォートやエクロックと同様にアセチルコリンによる刺激を阻害する薬です。

② 水道水イオントフォレーシス

 汗の出る部位を水道水に浸して電流を流す方法です。130分くらいを毎日か1日おきに繰り返します。十分な効果がみられるまで、週に2~3回を1~3週間の初期治療を行い、それ以降は週1回の維持療法が進められています。*当院でも予約で行っております。両手で30分くらい時間がかかります。

③ A型ボツリヌス毒素の局所療法

ボツリヌス毒素は、アセチルコリンという汗を出させる働きのある神経伝達物質を抑制することで発汗を抑えます。局所に注射をすると、約1か月後から効果が出始めて、約6か月くらい持続するといわれています。*自費治療になります。腋窩や手掌の多汗症に行われています。

④ 内服薬

主な内服薬として、自律神経調整作用のあるグランダキシンや、抗コリン薬であるプロ・バンサインなどが保険適応であり、注意深く使えば有効なことがあります。また体のほてりをとる漢方薬などを併用することもあります。

⑤ マイクロ波による切らないワキ汗・ワキガ治療

ミラドライ(miraDryⓇ)は、国内で唯一のマイクロ波によるワキ汗治療器として薬事承認を取得しています。また、ミラドライの効果と安全性は米国のFDA*で認められており、腋窩多汗症、腋臭症(ワキガ)、減毛の適応で承認を取得しています。詳しくは受診時にお問い合わせください。

 

*FDA:アメリカ食品医薬品局=日本の厚生労働省に当たる政府機関

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